みけの物語カフェ

いろんなお話を公開しています。お暇なときにでも…。

0074「大切な場所」

「大切(たいせつ)な場所(ばしょ)」(2009/02/09)

「何(なん)でそうなるのよ」祐実(ゆみ)は怒(おこ)っていた。「勝手(かって)に決(き)めないでよ!」
「だって、祐実(ゆみ)には仕事(しごと)があるだろ。ついて来(こ)いなんて言(い)えないよ」
「そうよ。やっと今(いま)の仕事(しごと)、面白(おもしろ)くなってきたのよ。これから…」
「だから、別(わか)れよう。その方(ほう)がいいんだ。僕(ぼく)ひとりで田舎(いなか)に帰(かえ)るから」
「もう、そうやっていつもひとりで決(き)めちゃって。そういうところ、直(なお)しなさいよ」
「仕方(しかた)ないだろ。家(いえ)の仕事(しごと)、手伝(てつだ)わないといけなくなったんだから」
「だったら、何(なん)でついて来(こ)いって言(い)わないのよ」
「そんなこと言(い)ったって…。来(き)てくれるのかよ」
「何(なん)で私(わたし)が、田舎(いなか)になんか…。私(わたし)、虫(むし)とか大嫌(だいきら)いなんだから、行(い)くわけないでしょ」
「もういいよ。別(わか)れた方(ほう)がいいんだ」
「何(なん)で…、そんなに簡単(かんたん)にあきらめるのよ。やっぱり私(わたし)のこと好(す)きじゃなかったんだ」
「好(す)きだよ。好(す)きだから…。祐実(ゆみ)には幸(しあわ)せになってほしいんだ!」
「じゃあ、ちゃんと言(い)いなさいよ。私(わたし)…、あなたと一緒(いっしょ)じゃないと幸(しあわ)せじゃないの。あなたのそばが、いちばん居心地(いごこち)がいいの。何(なに)があっても離(はな)れないから…」
「祐実(ゆみ)…! 僕(ぼく)と…、僕(ぼく)について来(こ)い!」
「いいわよ。そのかわり、虫(むし)とか出(で)たときは、すぐに助(たす)けに来(き)てよ。約束(やくそく)だからね」
<つぶやき>何(なに)よりも大切(たいせつ)なもの。あなたにはありますか? 私(わたし)は、御馳走(ごちそう)があれば…。
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1520「理想の男子」

「理想(りそう)の男子(だんし)」(2025/04/30)

 彼女(かのじょ)は両親(りょうしん)の不仲(ふなか)に悩(なや)まされていた。結婚(けっこん)に憧(あこが)れをもてなくなっていた彼女(かのじょ)だが、ひとりぼっちにはなりたくないと思(おも)っていた。そこで彼女(かのじょ)は、自分(じぶん)の結婚相手(けっこんあいて)についてある理想(りそう)を抱(いだ)くようになった。それは、彼女(かのじょ)に対(たい)して優(やさ)しくて従順(じゅうじゅん)。で、まあまあのルックス。浮気(うわき)とか絶対(ぜったい)しなくて、彼女(かのじょ)のことだけを見(み)ている人(ひと)――。
 だが、彼女(かのじょ)の周(まわ)りを見回(みまわ)してみても、それにかなう人(ひと)などいなかった。そこで、彼女(かのじょ)は思(おも)った。これはもう…、自分(じぶん)で育(そだ)てるしかないんじゃないかと。育(そだ)てるといっても、どうしたものか…。
 そこで、彼女(かのじょ)はひとりの同級生(どうきゅうせい)の男子(だんし)に目(め)をつけた。普段(ふだん)の彼(かれ)を見(み)ていて、この男(こ)ならいけるんじゃないかと直感(ちょっかん)したのだ。そこで彼女(かのじょ)は思(おも)い切(き)った行動(こうどう)に走(はし)った。その男子(だんし)との距離(きょり)を縮(ちぢ)めて、卒業(そつぎょう)の頃(ころ)には恋人(こいびと)になっていた。それと同時(どうじ)に、猛勉強(もうべんきょう)をして彼(かれ)と同(おな)じ大学(だいがく)に入学(にゅうがく)を決(き)めた。
 卒業(そつぎょう)の日(ひ)。彼女(かのじょ)は、彼(かれ)と手(て)をつないで一緒(いっしょ)に帰(かえ)りながら思(おも)った。
 さて、これからが大変(たいへん)よ。大学(だいがく)にはあたしより綺麗(きれい)な女子(じょし)がいっぱいいるはず。だから、ちゃんとそばにいないと…。せっかく理想(りそう)の男(おとこ)に育(そだ)てたのに、よその女(おんな)に獲(と)られるなんてあり得(え)ないから。それに…。彼女(かのじょ)は彼(かれ)の顔(かお)を見(み)つめて、次(つぎ)の作戦(さくせん)を考(かんが)えていた。
 ちょっと美男子(びだんし)にしすぎちゃったから、ちょっとダサ男(お)にしないといけないかもね。
<つぶやき>こうやって男子(だんし)は創(つく)られていくのかも…。逆(さか)らわないようにしましょうね。
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0073「二人だけのサイン」

「二人(ふたり)だけのサイン」(2009/01/10)

 十年(じゅうねん)ぶりの高校(こうこう)の同窓会(どうそうかい)。そんなに集(あつ)まらないと思(おも)っていたのに…。僕(ぼく)はぐるりと辺(あた)りを見(み)まわした。そのとき人(ひと)だかりの中(なか)から、
「おい、田崎(たざき)!」嬉(うれ)しそうに男(おとこ)が駆(か)け寄(よ)ってきて、
「久(ひさ)し振(ぶ)りだなぁ。元気(げんき)だったか!」
「兼田(かねだ)か?」それは親友(しんゆう)だった男(おとこ)。卒業(そつぎょう)してからは会(あ)う機会(きかい)もなくなっていた。彼(かれ)とはなぜか気(き)があって、遊(あそ)び仲間(なかま)のうちで何(なん)でも話(はな)せる気(き)の良(い)い奴(やつ)だった。
「おまえ知(し)ってるか?」兼田(かねだ)は僕(ぼく)の耳(みみ)もとでつぶやいた。「マドンナ、結婚(けっこん)したみたいだぞ」
 マドンナ。クラスの中(なか)で飛(と)び抜(ぬ)けて可愛(かわい)い娘(こ)で、僕(ぼく)たちは密(ひそ)かにそう呼(よ)んでいた。
「あの頃(ころ)、おまえ好(す)きだったもんな」兼田(かねだ)はニヤニヤして、「結局(けっきょく)、告白(こくはく)できなくて…」
「よせよ、もう昔(むかし)の話(はな)しだろ」僕(ぼく)は心(こころ)がざわついた。
 実(じつ)は、マドンナと短(みじか)い間(あいだ)だったけど付(つ)き合(あ)っていた。別(べつ)に告白(こくはく)をしたわけではないのだが。ちょっとしたきっかけで話(はなし)をし始(はじ)めて、二人(ふたり)にしか分(わ)からないサインを交(か)わしたり。会(あ)うときも誰(だれ)にも知(し)られないように気(き)を配(くば)り、わくわくする時間(じかん)を共有(きょうゆう)していた。
 卒業(そつぎょう)の時(とき)、僕(ぼく)はマドンナと約束(やくそく)をした。今度(こんど)会(あ)ったとき、お互(たが)いにまだ好(す)きでいたら、サインを交(か)わそうねって。それから僕(ぼく)らは別々(べつべつ)の道(みち)へ進(すす)み、二人(ふたり)の絆(きずな)は途切(とぎ)れたまま。
 僕(ぼく)は会場(かいじょう)で、いつしかマドンナを捜(さが)していた。彼女(かのじょ)は女子(じょし)たちの輪(わ)の中(なか)にいた。彼女(かのじょ)と目(め)があったとき、僕(ぼく)はドキッとした。彼女(かのじょ)は二人(ふたり)だけのサインを送(おく)っていたのだ。
<つぶやき>青春(せいしゅん)の淡(あわ)い恋(こい)。懐(なつ)かしくもあり、どこか危険(きけん)な香(かお)りもはらんでいそうです。
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0072「幸せの基準」

「幸(しあわ)せの基準(きじゅん)」(2009/01/08)

 加代子(かよこ)は行(ゆ)き詰(づ)まっていた。人生(じんせい)の選択(せんたく)にことごとく失敗(しっぱい)して、生(い)きる気力(きりょく)さえなくしていた。人(ひと)づてによく当(あ)たる占(うらな)い師(し)のことを知(し)って、彼女(かのじょ)は訪(たず)ねてみた。
 その占(うらな)い師(し)は八十路(やそじ)を越(こ)えた老人(ろうじん)だった。温和(おんわ)な顔立(かおだ)ちの老人(ろうじん)は、嫌(いや)な顔(かお)をするでもなく彼女(かのじょ)を招(まね)き入(い)れて、「私(わたし)は、占(うらな)い師(し)じゃないんですよ。ただ、話(はなし)をするだけです」
「そんな…」加代子(かよこ)は落胆(らくたん)の顔(かお)をして、「よく当(あ)たるって聞(き)いてきたんですよ」
「こんな年寄(としよ)りですが、よろしければ、お話(はな)しをうかがいますが」老人(ろうじん)は優(やさ)しく微笑(ほほえ)んだ。
 この老人(ろうじん)からは不思議(ふしぎ)なオーラが出(で)ていた。加代子(かよこ)は身(み)も心(こころ)も軽(かる)くなるような、何(なに)か暖(あたた)かなものに包(つつ)まれているような気(き)がして、心(こころ)に溜(た)まっていたものを吐(は)き出(だ)した。
 老人(ろうじん)は彼女(かのじょ)の話(はなし)を聞(き)き終(お)わると、「大変(たいへん)でしたね。よく、がんばりました。でも、あなたの選択(せんたく)は本当(ほんとう)に間違(まちが)っていたんでしょうか。あなたはまだお若(わか)い。そんなことを考(かんが)えるのは、ずっと先(さき)でもいいんじゃないんですか。ご主人(しゅじん)のことだってそうです。二人三脚(ににんさんきゃく)ですよ。お互(たが)いに助(たす)け合(あ)い、補(おぎな)い合(あ)って愛情(あいじょう)を育(そだ)てていくんです」
「でも、あの人(ひと)は私(わたし)のことなんか…。どうでもいいんです」
「あなたはどうですか? もう、愛(あい)せなくなってしまったのですか?」
「私(わたし)は…。分(わ)からない。どうしたいのか分(わ)からないんです」
「今(いま)の気持(きも)ちをご主人(しゅじん)に話(はな)してみたらどうですか。何(なに)か変(か)わるかもしれませんよ」
<つぶやき>人生(じんせい)は人(ひと)それぞれ。失敗(しっぱい)もありますよ。でも、人(ひと)は学(まな)ぶことができるはず。
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0071「瓢箪から駒?」

「瓢箪(ひょうたん)から駒(こま)?」(2008/12/27)

「遅(おそ)かったじゃない。何(なに)やってたのよ」芳恵(よしえ)は玄関(げんかん)を見回(みまわ)している健太郎(けんたろう)にささやいた。
「お前(まえ)の家(いえ)、すごいなぁ。お嬢様(じょうさま)だとは聞(き)いてたけど、こんな豪邸(ごうてい)に住(す)んでたのかよ」
「そんなこといいから、早(はや)くあがって」
「いや。俺(おれ)は、これを返(かえ)しに来(き)ただけだから。でも、何(なん)でネクタイ着用(ちゃくよう)なんだよ。仕事(しごと)じゃないんだから、こんな格好(かっこう)――」
「あのね、これから何(なに)があっても、私(わたし)にあわせて。余計(よけい)なことはしゃべらないでよ」
 芳恵(よしえ)は健太郎(けんたろう)に質問(しつもん)させる時間(じかん)を与(あた)えなかった。有無(うむ)を言(い)わせず、健太郎(けんたろう)を家(いえ)の中(なか)に引(ひ)っぱっりあげた。奥(おく)の部屋(へや)に通(とお)されると、そこには芳恵(よしえ)の父親(ちちおや)がいかめしい顔(かお)で座(すわ)っていた。
「お父様(とうさま)。こちらが、岡部健太郎(おかべけんたろう)さんです」
 健太郎(けんたろう)はいつもと違(ちが)う芳恵(よしえ)の振(ふ)る舞(まい)いに驚(おどろ)いた。ただ唖然(あぜん)とするばかり。
「こいつか」父親(ちちおや)は健太郎(けんたろう)の顔(かお)を睨(にら)みつけた。「こんな男(おとこ)のどこがいいんだ」
「お父様(とうさま)。健太郎(けんたろう)さんは、とてもいい人(ひと)です。私(わたし)と結婚(けっこん)の約束(やくそく)をしてくれました」
 健太郎(けんたろう)は目(め)をみはって、芳恵(よしえ)の顔(かお)を見(み)た。芳恵(よしえ)は目(め)で合図(あいず)を送(おく)る。
「許(ゆる)さん。お前(まえ)は、わしが決(き)めた相手(あいて)と結婚(けっこん)するんだ。今度(こんど)の見合(みあ)いはな、大切(たいせつ)な…」
「お父(とう)さん」突然(とつぜん)、健太郎(けんたろう)が口(くち)を開(ひら)いた。「僕(ぼく)はまだまだ半人前(はんにんまえ)ですが、芳恵(よしえ)さんのことを誰(だれ)よりも愛(あい)しています。必(かなら)ず幸(しあわ)せにしてみせます。結婚(けっこん)を許(ゆる)して下(くだ)さい!」
<つぶやき>突然(とつぜん)のこととはいえ、この先(さき)どうなるのでしょう。本当(ほんとう)に結婚(けっこん)するのかな?
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1519「アクマ降臨」

「アクマ降臨(こうりん)」(2025/04/29)

 あたしは彼(かれ)とドライブに出(で)かけた。でも、彼(かれ)はどこへ行(い)くのか教(おし)えてくれなかった。彼(かれ)は黙(だま)って車(くるま)を走(はし)らせる。なんか、いつもの彼(かれ)とは別人(べつじん)のようだった。
 車(くるま)はどこかの山(やま)の中(なか)へ、細(ほそ)い道(みち)を登(のぼ)っていく。森(もり)へ入(はい)って、どうやら別荘地(べっそうち)のようだ。でも、人(ひと)が住(す)んでいるのか…? オフシーズンだからなのか人(ひと)の姿(すがた)がどこにもないように感(かん)じた。どの別荘(べっそう)も、何(なん)だか寂(さび)れているように見(み)える。
 彼(かれ)はある別荘(べっそう)の前(まえ)で車(くるま)を止(と)めた。そして降(お)りるように促(うなが)して言(い)った。
「君(きみ)に会(あ)わせたいんだ。僕(ぼく)の親友(しんゆう)にね。きっと君(きみ)も好(す)きになるはずだ」
 あたしは不安(ふあん)な気持(きも)ちになったが、彼(かれ)と一緒(いっしょ)に別荘(べっそう)の前(まえ)まで行(い)く。彼(かれ)は扉(とびら)のカギを開(あ)ける。えっ、ここって彼(かれ)の別荘(べっそう)なの? あたしは、そんな話(はな)し聞(き)いたことないんですけど…。彼(かれ)は中(なか)へ入(はい)って行(い)く。あたしも彼(かれ)のあとからついて行(い)く。
 別荘(べっそう)の中(なか)は薄暗(うすぐら)く、何(なん)だか埃(ほこり)っぽい臭(にお)いがした。暗(くら)さに目(め)が慣(な)れてくると、そこは家具(かぐ)もなくがらんとしていた。でも、床(ゆか)に何(なに)か模様(もよう)が…。大(おお)きな円(えん)の中(なか)に、何(なに)か文字(もじ)のようなものが書(か)かれてあった。彼(かれ)はその円(えん)の中心(ちゅうしん)に立(た)って言(い)った。
「じゃあ、僕(ぼく)と親友(しんゆう)になった悪魔(あくま)を呼(よ)び出(だ)すね」
 あたしは、彼(かれ)が何(なに)を言(い)ってるのか分(わ)からなくて、「アクマってなによ?」
 そのとき、あたしは彼(かれ)の言葉(ことば)が理解(りかい)できなくなっているのに気(き)がついた。
<つぶやき>彼(かれ)はどこで悪魔(あくま)さんと知(し)り合(あ)ったのでしょうか? ちょっと気(き)になりますね。
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0004「優しい嘘」

「優(やさ)しい嘘(うそ)」(2009/05/15)

   結婚(けっこん)十数年目(じゅうすうねんめ)の夫婦(ふうふ)。朝食(ちょうしょく)の情景(じょうけい)。
和子(かずこ)(お茶(ちゃ)を出(だ)して)「ねえ、昨夜(ゆうべ)も遅(おそ)かったみたいね」
孝夫(たかお)(ちょっと動揺(どうよう))「えっ…、そうだね」(ご飯(はん)を頬張(ほおば)る)
和子(夫(おっと)の前(まえ)に座(すわ)り顔色(かおいろ)をうかがいながら)「仕事(しごと)、そんなに忙(いそが)しいの?」
孝夫(ご飯(はん)をのみ込(こ)んで)「うん…、ちょっと忙(いそが)しいかな」
和子「へーえ、そうなんだ」
孝夫「なに? なんか…」
和子「別(べつ)に…。そうだ、昨夜(ゆうべ)、山田(やまだ)さんから電話(でんわ)があったわよ」
孝夫「えっ、山田(やまだ)から? なんて…」
和子「さぁ。でも、あなた、会社(かいしゃ)にいたのよね。なんで家(いえ)に電話(でんわ)してきたのかな?」
孝夫「昨日(きのう)はさ、外回(そとまわ)りしてて、直帰(ちょっき)するって言(い)っといたから。たぶんそれで…」
和子「あれーぇ。でも、山田(やまだ)さん、あなたは定時(ていじ)で帰(かえ)ったって言(い)ってたわよ」
孝夫「あれっ、おかしいな…」
   中学生(ちゅうがくせい)の娘(むすめ)・あずさがあわてて飛(と)び込(こ)んで来(き)て、食卓(しょくたく)に座(すわ)る。
あずさ「お母(かあ)さん! 今日(きょう)から朝練(あされん)が始(はじ)まるから早(はや)く起(お)こしてって言(い)ったじゃないの」
和子「そうだった?」
あずさ(食事(しょくじ)を口(くち)いっぱいに入(い)れて)「もう、遅(おく)れちゃうよ。先生(せんせい)に、怒(おこ)られるんだから」
和子「遅(おそ)くまで起(お)きてるからでしょう。もっと早(はや)く寝(ね)なさいよ」
あずさ(食(た)べながら)「いろいろやりたいことがあるのよ。一日(いちにち)、三十時間(さんじゅうじかん)あったらなぁ」
孝夫(笑(わら)いながら)「それは、いくらなんでも無理(むり)だろう。(和子(かずこ)に)なあ…」
     和子(かずこ)は孝夫(たかお)に冷(つめ)たい目線(めせん)を向(む)ける。孝夫(たかお)は、目(め)をそらして食事(しょくじ)をつづける。
あずさ(食(た)べ終(お)わって、口(くち)をもぐもぐさせながら)「もう、行(い)く。やばいよ」
和子「はい、お弁当(べんとう)。残(のこ)さないでよ」
あずさ「わかってるって。いつも、ありがとうね。行(い)ってきまーす」
   あずさ、飛(と)び出(だ)していく。和子(かずこ)は食卓(しょくたく)に戻(もど)り、
和子「で、どこに行(い)ってたの?」
孝夫「だから、仕事(しごと)だよ。得意先(とくいさき)を回(まわ)ってて…」
和子「あなたのシャツ、いい匂(にお)いがしてたけど。誰(だれ)かと、高級料理(こうきゅうりょうり)でも食(た)べたのかな?」
孝夫「そんなことないよ。気(き)のせいだって。ははは…」
和子「あなた! 家族(かぞく)のあいだで嘘(うそ)はつかないって約束(やくそく)したよね」
孝夫「嘘(うそ)なんか…。(間(ま))わかったよ。実(じつ)は…、篠原(しのはら)のところで料理(りょうり)を習(なら)ってるんだ」
和子「篠原(しのはら)…。あなたの親友(しんゆう)で、あの高級(こうきゅう)レストランのオーナーシェフの…篠原(しのはら)さん?!」
孝夫「そうだよ。今度(こんど)の結婚記念日(けっこんきねんび)、そのレストランで、僕(ぼく)が作(つく)った料理(りょうり)を食(た)べてもらおうかなって…。もう、びっくりさせようと思(おも)ってたのになあ」
和子「えっ、ごめんなさい。私(わたし)…。あーあ、そういうことは早(はや)く教(おし)えてよ。新(あたら)しい服(ふく)、買(か)わないと。ねっ、いいでしょう? わぁ、楽(たの)しみだな。どんなドレスにしようかな…」
孝夫「いや、そこまでしなくても…。あずさも連(つ)れて行(い)くんだし」(困(こま)った顔(かお)で見(み)つめる)
<つぶやき>なんだかんだと言(い)っても、家族円満(かぞくえんまん)が一番(いちばん)ですよね。うちは大丈夫(だいじょうぶ)かな?
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