「約束(やくそく)」(2008/10/28)
昼近(ひるちか)くになって純子(じゅんこ)はベッドから這(は)い出(だ)した。今日(きょう)は久(ひさ)し振(ぶ)りのお休(やす)み。もう一ヵ月(いっかげつ)も休(やす)みがなかったのだ。だから、今日(きょう)は一日(いちにち)をまったりと過(す)ごすことに決(き)めていた。純子(じゅんこ)は思(おも)いっ切(き)り背伸(せの)びをするとニコニコしながら、「今日(きょう)は、なにしようかなぁ」と呟(つぶや)いた。
これが純子(じゅんこ)の平穏(へいおん)な一日(いちにち)の始(はじ)まり…、のはずだった。一本(いっぽん)の電話(でんわ)がかかってくるまでは。
<おめえ、何(なに)やってんだ。約束忘(やくそくわす)れたんけ?>それは男(おとこ)の声(こえ)だった。
「えっ、どなたですか?」純子(じゅんこ)には聞(き)き覚(おぼ)えのない声(こえ)だった。
<バカこくでねえ。オラだ! おめえの物忘(ものわす)れは、大人(おとな)になってもちっとも治(なお)んねえな。そんなんだからさ、いつまでたっても恋人(こいびと)が出来(でき)ねえんだ>
「さとし? 何(なん)で…、何(なん)で番号知(ばんごうし)ってんの!」それは幼(おさな)なじみの男(おとこ)だった。
<約束通(やくそくどお)り迎(むか)えに来(き)たさぁ。田舎(いなか)にけえって、結婚(けっこん)すべ>
「いきなり何(なに)よ。あんたとなんか結婚(けっこん)しないわよ。するわけないでしょ!」
<なに言(い)ってんだ。三年(さんねん)たっても恋人(こいびと)できなかったら、オラと結婚(けっこん)するって言(い)ったべ>
「そんなこと言(い)ってねえ」でも純子(じゅんこ)は、冗談半分(じょうだんはんぶん)にそんなことを言(い)ったような気(き)がした。
<すぐ着(つ)くからな。もう、淋(さび)しい思(おも)いさせねえから。待(ま)ってろや>
純子(じゅんこ)はこの後(あと)、さとしを説得(せっとく)して追(お)い出(だ)すのに長(なが)い時間(じかん)を費(つい)やした。結局(けっきょく)、まったりとした休日(きゅうじつ)は夢(ゆめ)に終(お)わった。
<つぶやき>冗談半分(じょうだんはんぶん)に変(へん)な約束(やくそく)してません? 気(き)をつけないととんでもないことに…。
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