みけの物語カフェ

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0013「復活の日」

「復活(ふっかつ)の日(ひ)」(2008/10/29)

 古(ふる)びた酒場(さかば)のカウンターで、一人(ひとり)の男(おとこ)がバーボンを飲(の)んでいた。だいぶ酔(よ)いが回(まわ)っているようで、うつろな目(め)をして物思(ものおも)いにふけっていた。そこに、この店(みせ)には不釣(ふつ)り合(あ)いな、二十歳(はたち)ぐらいの若(わか)い女(おんな)が近寄(ちかよ)ってきて、隣(となり)の席(せき)に座(すわ)り男(おとこ)の顔(かお)を覗(のぞ)き込(こ)んだ。
「ねえ」女(おんな)は男(おとこ)に声(こえ)をかけ、「私(わたし)にダンス教(おし)えてよ。お願(ねが)い」
 男(おとこ)は女(おんな)の顔(かお)をちらりと見(み)ただけで、何(なに)も言(い)わずに残(のこ)っていたバーボンを喉(のど)に流(なが)しこんだ。
「おじさん、聞(き)いてんの? 何(なん)とか言(い)いなよ」女(おんな)はイラついて男(おとこ)の腕(うで)をつかんだ。
 男(おとこ)はその手(て)を振(ふ)りはらうと、「何度来(なんどき)ても同(おな)じだ。俺(おれ)は、ダンスはやめたんだ」
「そんなこと言(い)わないで。私(わたし)も、おじさんみたいに一流(いちりゅう)のダンサーになりたいの」
 女(おんな)の目(め)は真剣(しんけん)だった。男(おとこ)の心(こころ)は揺(ゆ)れていた。彼女(かのじょ)を見(み)ていると、昔(むかし)の自分(じぶん)とそっくりなのだ。捨(す)てたはずの夢(ゆめ)がちらつき、心(こころ)の片隅(かたすみ)で熱(あつ)い気持(きも)ちがくすぶり始(はじ)めていた。
「やめとけ。俺(おれ)みたいになるだけだ。踊(おど)れなくなったら、もう死(し)んだも同然(どうぜん)だ」
「だったら私(わたし)が生(い)き返(かえ)らせてあげる。おじさんがなくした夢(ゆめ)、私(わたし)が取(と)り戻(もど)してあげるわ」
「お前(まえ)な……」男(おとこ)は何(なに)か言(い)いかけたが、しばらく考(かんが)え込(こ)んで、「俺(おれ)の授業料(じゅぎょうりょう)は高(たか)いぞ」
「えっ…、教(おし)えてくれるの? ありがとう! でも、授業料(じゅぎょうりょう)っていくらなの?」
 男(おとこ)は飲(の)んでいたグラスを差(さ)し出(だ)し、「こいつ、一杯(いっぱい)だ」
<つぶやき>いくつになっても、熱(あつ)い情熱(じょうねつ)を忘(わす)れないでいたいですよね。青春(せいしゅん)、万歳(ばんざい)!!
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