みけの物語カフェ

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0001「伝説・寿椅子」

「伝説(でんせつ)・寿椅子(ことぶきいす)」(2009/04/18)

   ある会社(かいしゃ)の給湯室(きゅうとうしつ)。新入社員(しんにゅうしゃいん)の理恵(りえ)に仕事(しごと)を教(おし)えている女子社員(じょししゃいん)の綾佳(あやか)。
綾佳(あやか)「ここが給湯室(きゅうとうしつ)ね。お茶(ちゃ)の葉(は)とかコーヒーはこの棚(たな)にあって、湯呑(ゆの)みとかカップは後(うし)ろの食器棚(しょっきだな)に入(はい)ってるから」
理恵(りえ)「はい」
綾佳(あやか)「あと、分(わ)かんないことがあったら、いつでも訊(き)いて。教(おし)えてあげるから」
理恵(りえ)「あの…。私(わたし)、何(なに)かしましたか?」
綾佳(あやか)「何(なに)かって?」
理恵(りえ)「だって、私(わたし)の前(まえ)に座(すわ)ってる先輩(せんぱい)が、怖(こわ)い顔(かお)で私(わたし)を見(み)てるんです」
綾佳(あやか)「ああ、お局様(つぼねさま)ね。(あたりを気(き)にして小声(こごえ)で)亀山先輩(かめやませんぱい)に逆(さか)らっちゃダメよ。あの人(ひと)に睨(にら)まれたら、地獄(じごく)の底(そこ)に突(つ)き落(お)とされるから」
理恵(りえ)「ええっ…、そんな。私(わたし)、ちゃんと挨拶(あいさつ)もしたし、なにも…」
綾佳(あやか)「私(わたし)が思(おも)うに、あなたの使(つか)ってる椅子(いす)が原因(げんいん)かもね」
理恵(りえ)「椅子(いす)?」
綾佳(あやか)「この会社(かいしゃ)には、寿椅子(ことぶきいす)っていう伝説(でんせつ)があってね。その椅子(いす)に女子社員(じょししゃいん)が座(すわ)ると、三ヶ月以内(さんかげついない)に恋人(こいびと)ができて、一年以内(いちねんいない)に寿退社(ことぶきたいしゃ)できるって言(い)われているの」
理恵(りえ)「ほんとですか? そんなことあるはずないですよ」
綾佳(あやか)「だって、一年(いちねん)くらい前(まえ)にこの部署(ぶしょ)に来(き)た娘(こ)がね、昨日(きのう)、寿退社(ことぶきたいしゃ)したのよ。来週(らいしゅう)、結婚式(けっこんしき)を挙(あ)げるんだって」
理恵(りえ)「え? でも、それは…」
綾佳(あやか)「その娘(こ)の椅子(いす)。いま、あなたが使(つか)ってるやつよ」
理恵(りえ)「ええっ…」
綾佳(あやか)「亀山先輩(かめやませんぱい)は、あなたの椅子(いす)を寿椅子(ことぶきいす)だと思(おも)ってるのよ。きっと、狙(ねら)ってたんだわ。今朝(けさ)だって、いつもよりも早(はや)く出社(しゅっしゃ)してたし。でも…、どうして椅子(いす)を取(と)り替(か)えなかったのかな?」
理恵(りえ)「あっ! 私(わたし)、今朝(けさ)、早(はや)く来(き)すぎて、まだ誰(だれ)もいなかったから、あの椅子(いす)に座(すわ)って…」
綾佳(あやか)「それ、ほんと?」
理恵(りえ)「ええ。そしたら、亀山先輩(かめやませんぱい)が走(はし)り込(こ)んできて…。なんか、すごい顔(かお)で…」
綾佳(あやか)「ああ、やっちゃったわね」
理恵(りえ)「どうしよう…」
      突然(とつぜん)、亀山(かめやま)が給湯室(きゅうとうしつ)を覗(のぞ)き込(こ)んで、
亀山(かめやま)「いつまでかかってるの。早(はや)く仕事(しごと)に戻(もど)りなさい。(理恵(りえ)を睨(にら)んで)佐々木(ささき)さん、早(はや)く一人前(いちにんまえ)になってよね。でないと、私(わたし)…」
      亀山(かめやま)、薄笑(うすわら)いをうかべて立(た)ち去(さ)る。
理恵(りえ)(慌(あわ)てて)「私(わたし)、今(いま)から椅子(いす)を取(と)り替(か)えてもらってきます」
綾佳(あやか)「もう遅(おそ)いわよ。伝説(でんせつ)では持(も)ち主(ぬし)になった人(ひと)が寿退社(ことぶきたいしゃ)しない限(かぎ)り、次(つぎ)の持(も)ち主(ぬし)にはなれないらしいから」
理恵(りえ)「そんなあ…」
<つぶやき>こんな椅子(いす)があったら、私(わたし)も…。でも、これって神頼(かみだの)みですよね。
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