「いちご症候群(しょうこうぐん)」(2008/11/08)
ここは心療内科(しんりょうないか)の診察室(しんさつしつ)。今日(きょう)もちょっと変(か)わった患者(かんじゃ)がやって来(き)た。
「どうされました?」美人(びじん)の先生(せんせい)は優(やさ)しく微笑(ほほえ)んた。
「あの…」患者(かんじゃ)はそわそわして周(まわ)りを気(き)にしながら小(ちい)さな声(こえ)で言(い)った。
「実(じつ)は、見(み)えてしまうんです」
「えっ?」先生(せんせい)は患者(かんじゃ)を落(お)ち着(つ)かせようと、「大丈夫(だいじょうぶ)ですよ。何(なに)が見(み)えるんですか?」
患者(かんじゃ)は震(ふる)える手(て)を押(お)さえながら、「僕(ぼく)、食(た)べ物(もの)に見(み)えてしまうんです。いろんなものが…。あれ、先生(せんせい)のくちびる…」患者(かんじゃ)は先生(せんせい)の口元(くちもと)をじっと見(み)つめた。
「吉田(よしだ)さん、大丈夫(だいじょうぶ)ですか? 私(わたし)のくちびるが、何(なに)かに見(み)えるんですか?」
「ああああ…」患者(かんじゃ)は何(なん)とか理性(りせい)を保(たも)とうと踏(ふ)みとどまって、
「イチゴ…。みずみずしいイチゴに見(み)えます。ああああああ…、食(た)べたい!」
「吉田(よしだ)さん。落(お)ち着(つ)きましょう。深呼吸(しんこきゅう)して下(くだ)さい、ほら」先生(せんせい)は深呼吸(しんこきゅう)をして見(み)せた。
だが、これは逆効果(ぎゃくこうか)だった。患者(かんじゃ)はつばを飲(の)み込(こ)み、目(め)を血走(ちばし)らせ、くちびるを奪(うば)おうと先生(せんせい)に抱(だ)きついた。驚(おどろ)いた先生(せんせい)は悲鳴(ひめい)をあげて、患者(かんじゃ)を思(おも)いっ切(き)りひっぱたいて、
「何(なに)すんのよ。この変態(へんたい)おやじ!」と叫(さけ)んでから、先生(せんせい)ははっと我(われ)に返(かえ)った。
「あらっ、私(わたし)ったら…」先生(せんせい)は慌(あわ)てて患者(かんじゃ)に駆(か)け寄(よ)り、「すいません、大丈夫(だいじょうぶ)ですか?」
患者(かんじゃ)は先生(せんせい)の顔(かお)を覗(のぞ)き込(こ)み、「あれ、治(なお)ってる。先生(せんせい)、もうイチゴに見(み)えません!」
<つぶやき>とても不思議(ふしぎ)な病気(びょうき)ですよね。でも、あなたの一撃(いちげき)で治(なお)るかもしれません。
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