「水曜(すいよう)の女(おんな)」(2008/11/20)
智美(ともみ)と遥(はるか)は十年来(じゅうねんらい)の友(とも)だった。でも、同(おな)じ人(ひと)を好(す)きになってしまい、一ヵ月前(いっかげつまえ)から絶交状態(ぜっこうじょうたい)にあった。
智美(ともみ)が行(い)き付(つ)けだった飲(の)み屋(や)をのぞくと、遥(はるか)が酔(よ)いつぶれていた。この店(みせ)には仕事帰(しごとがえ)り、よく二人(ふたり)で来(き)ていたのだ。絶交(ぜっこう)してからは、智美(ともみ)は足(あし)が遠(とお)のいていた。
「やあ、久(ひさ)し振(ぶ)りじゃない」店主(てんしゅ)はいつもの笑顔(えがお)でそう言(い)うと、「遥(はるか)ちゃん、どうしたんだろうねぇ。こんなになるまで飲(の)んだことないのに」
「もう、しょうがないな」智美(ともみ)は隣(とな)りに座(すわ)り遥(はるか)を揺(ゆ)り起(お)こし、「ねえ、遥(はるか)。起(お)きなさいよ」
「うーん」と遥(はるか)はゆっくり顔(かお)をあげると、智美(ともみ)の顔(かお)を覗(のぞ)き込(こ)み、「あっ、智美(ともみ)!」
「あんた、飲(の)みすぎだよ。いい加減(かげん)にしなよ」
「智(とも)にそんなこと言(い)われたくないよ。何(なん)でここにいるのよ」
「遥(はるか)と同(おな)じ理由(りゆう)。私(わたし)も、酔(よ)いつぶれようと思(おも)ってね」
「智(とも)も振(ふ)られたんだ。はははは…。おかしくって…。たまんないわ。ふふふ…」
「そうね。まさかね、他(ほか)の女(おんな)がいたなんて。私(わたし)たち、何(なに)やってたんだろう」
「まったくだよ。仕事(しごと)が忙(いそが)しいとか言(い)って、水曜日(すいようび)にしか会(あ)ってくれなかったんだよ」
「水曜(すいよう)の女(おんな)か…。私(わたし)は、木曜(もくよう)だったなぁ。ねえ、また友達(ともだち)になってくれる?」
「なに言(い)ってるの。私(わたし)たちの腐(くさ)れ縁(えん)はいつまでも続(つづ)くの。二人(ふたり)でいい男(おとこ)、見(み)つけるわよ」
<つぶやき>空元気(からげんき)でもいいんですよ。前(まえ)を向(む)いて突(つ)き進(すす)みましょう。きっと明日(あした)は…。
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