「恋人週間(こいびとしゅうかん)」(2008/12/05)
「あの、佐藤太一(さとうたいち)さんですよね」
女性(じょせい)は一礼(いちれい)すると、「私(わたし)、結婚促進公団(けっこんそくしんこうだん)から派遣(はけん)された百瀬(ももせ)ひとみです。今日(きょう)から一週間(いっしゅうかん)、あなたの恋人(こいびと)になりました。よろしくお願(ねが)いします」
「はい……?」太一(たいち)はきょとんとして、「えっ、何(なん)なんですか?」
「あの、連絡(れんらく)が来(き)てると思(おも)うんですが…」
ひとみは顔(かお)を赤(あか)らめて、「申(もう)し訳(わけ)ありません。私(わたし)、またへまをしちゃって…。ごめんなさい。あの…、改(あらた)めてご説明(せつめい)します。政府(せいふ)が試験的(しけんてき)に恋人週間(こいびとしゅうかん)を始(はじ)めて、それは、えっと…、人口増加(じんこうぞうか)の対策(たいさく)で…。つまり…、政府(せいふ)がやる合(ごう)コンみたいなものです。登録(とうろく)されている男女(だんじょ)を出会(であ)わせて…」
「登録(とうろく)って、僕(ぼく)は登録(とうろく)なんかしてませんよ」
「あの、登録(とうろく)は本人(ほんにん)じゃなくても、家族(かぞく)ならできるんです。だから…」
「あっ。もしかして、お袋(ふくろ)が…。まったく、勝手(かって)なことするんだから」
「断(ことわ)らないで下(くだ)さい。一週間(いっしゅうかん)でいいんです。もし断(ことわ)られたら、登録(とうろく)を消(け)されちゃって…」
「でも、あなたみたいな奇麗(きれい)な人(ひと)だったら、恋人(こいびと)なんてすぐに…」
「見(み)た目(め)で判断(はんだん)しないで下(くだ)さい! 恋人(こいびと)ができないから、こうして…」
「あの…」太一(たいち)はひとみの涙(なみだ)を見(み)て、「分(わ)かりました。一週間(いっしゅうかん)…、よろしくお願(ねが)いします」
「ありがとうございます。私(わたし)、がんばりますから」
<つぶやき>これがきっかけで、結婚(けっこん)できるのでしょうか。後(あと)は、この二人(ふたり)しだいです。
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