「わがままな天使(てんし)」(2008/12/08)
「ねえ、エンジェルのケーキが食(た)べたい。買(か)ってきて」
「今(いま)から? 無理(むり)だよ。だって、もう店(みせ)は閉(し)まってるし」
「どうしても食(た)べたいの。私(わたし)の言(い)うこと何(なん)でもきくって言(い)ったじゃない」
「そりゃ言(い)ったけど…」
「買(か)ってきてくれたら、私(わたし)、手術(しゅじゅつ)してもいいんだけどなぁ」
「分(わ)かったよ。じゃあ、俺(おれ)が作(つく)ってやる。たしかケーキの本(ほん)あったし…」
くるみは武志(たけし)が本(ほん)を探(さが)し始(はじ)めると、悪戯(いたずら)っぽい目(め)をして、胸(むね)を押(お)さえて苦(くる)しみだした。それを見(み)た武志(たけし)は駆(か)け寄(よ)ってきて、「くるみ! しっかりしろ。いま、救急車(きゅうきゅうしゃ)よんで…」
くるみは電話(でんわ)をしに行(い)こうとする武志(たけし)の腕(うで)をつかんで、「その前(まえ)に、ケーキ買(か)ってきて」
「くるみ…」武志(たけし)はくるみの肩(かた)をつかんで、「ばか! 心配(しんぱい)させるなよ」
くるみは武志(たけし)の真剣(しんけん)な顔(かお)に驚(おどろ)いた。でも素直(すなお)に謝(あやま)れなくて、つい憎(にく)まれ口(ぐち)をたたいて、
「そんな顔(かお)しないでよ。どうせ、すぐ死(し)ぬんだから」
「そんなこと言(い)うなよ。先生(せんせい)だって、手術(しゅじゅつ)をすれば助(たす)かる可能性(かのうせい)だって…」
「ほんの少(すこ)しだけね。今(いま)まで生(い)きてこれたのは奇跡(きせき)なの。奇跡(きせき)なんて、そう続(つづ)かないわ」
「くるみ、あきらめるなよ」
「もう、いい。私(わたし)のことなんか、ほっといてよ」くるみはそう言(い)うと、自分(じぶん)の部屋(へや)に駆(か)け込(こ)んだ。武志(たけし)はやるせない思(おも)いを押(お)し殺(ころ)して、「今(いま)、ケーキ作(つく)ってやるから、待(ま)ってろよ」
<つぶやき>どうしようもない苦(くる)しみと悲(かな)しみを、どう乗(の)り越(こ)えたらいいのでしょうか。
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