みけの物語カフェ

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0058「新生日本誕生」

「新生日本誕生(しんせいにほんたんじょう)」(2008/12/13)

 涼子(りょうこ)は若(わか)くして新人賞(しんじんしょう)を受賞(じゅしょう)した女流作家(じょりゅうさっか)――。ここ一ヵ月間(いっかげつかん)、部屋(へや)にこもって仕事(しごと)をしていた。何(なん)とかきつい締切(しめきり)をこなした彼女(かのじょ)は、気分転換(きぶんてんかん)もかねて買(か)い物(もの)に出(で)かけた。
 近(ちか)くのコンビニに入(はい)った涼子(りょうこ)は、違和感(いわかん)を感(かん)じた。店員(てんいん)や客(きゃく)の話(はな)している言葉(ことば)が理解(りかい)できないのだ。まるで、外国(がいこく)に突然(とつぜん)迷(まよ)い込(こ)んでしまったような…。涼子(りょうこ)はパンやスナックなどをカゴに入(い)れレジまで持(も)って行(い)った。レジに表示(ひょうじ)された金額(きんがく)を見(み)て、涼子(りょうこ)はお金(かね)を店員(てんいん)に差(さ)し出(だ)した。すると店員(てんいん)は大声(おおごえ)をあげて、非常(ひじょう)ベルを鳴(な)らした。突然(とつぜん)のことに驚(おどろ)いた涼子(りょうこ)はおろおろするばかり。すぐに警官(けいかん)がやって来(き)て、涼子(りょうこ)は警察署(けいさつしょ)に連行(れんこう)された。
 ――取調室(とりしらべしつ)で刑事(けいじ)の訊問(じんもん)が始(はじ)まった。「この金(かね)はどうした!」
 刑事(けいじ)は涼子(りょうこ)の財布(さいふ)らかお金(かね)を出(だ)して、「円(えん)を使(つか)ったら罪(つみ)になることぐらい知(し)ってるだろ。円(えん)をどこで手(て)に入(い)れたんだ!」
 涼子(りょうこ)には、刑事(けいじ)がしゃべっている言葉(ことば)が理解(りかい)できなかった。
「私(わたし)が、何(なに)をしたっていうの? 私(わたし)は、お金(かね)を払(はら)おうと…」
 刑事(けいじ)たちは涼子(りょうこ)の言葉(ことば)を聞(き)き顔(かお)を見合(みあ)わせた。そして、何(なに)かひそひそと相談(そうだん)を始(はじ)めた。
「あんた」年長(ねんちょう)の刑事(けいじ)が日本語(にほんご)で話(はな)し始(はじ)めた。「知(し)らないのか? 日本(にほん)が変(か)わったのを…」
「変(か)わったって…。どういうこと?」
「新(あたら)しい政府(せいふ)が誕生(たんじょう)したんだ。それで、日本語(にほんご)の使用(しよう)を禁止(きんし)して、円(えん)も廃止(はいし)されたんだ」
<つぶやき>一ヵ月(いっかげつ)も閉(と)じこもっていたので、浦島太郎(うらしまたろう)状態(じょうたい)になってしまったんですね。
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