みけの物語カフェ

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0062「若返りクリーム」

「若返(わかがえ)りクリーム」(2008/12/17)

「また新(あたら)しい化粧品(けしょうひん)買(か)ったのか?」夫(おっと)は鏡(かがみ)の前(まえ)でお肌(はだ)の手入(てい)れをしている妻(つま)に言(い)った。
「商店街(しょうてんがい)にね、小(ちい)さな化粧品(けしょうひん)のお店(みせ)が開店(かいてん)したの。安(やす)かったのよ」
「いくら安(やす)いからって、こんなに買(か)わなくても…」
「だって、まとめて買(か)った方(ほう)がお得(とく)だったのよ」
 深夜(しんや)、妻(つま)の叫(さけ)び声(ごえ)で夫(おっと)は目(め)を覚(さ)ました。妻(つま)はおびえた顔(かお)で、
「義父(おとう)さん! いつ来(き)たんですか? ここは、私(わたし)たちの寝室(しんしつ)ですよ」
「なに言(い)ってるんだよ。俺(おれ)だよ」夫(おっと)は妻(つま)を見(み)て驚(おどろ)いた。若(わか)い頃(ころ)の妻(つま)がそこにいたのだ。
「出(で)てって下(くだ)さい!」妻(つま)は夫(おっと)を寝室(しんしつ)から追(お)い出(だ)してしまった。夫(おっと)は扉(とびら)を叩(たた)きながら、
「おい。いくら親父(おやじ)に似(に)てきたからって、なに考(かんが)えてんだよ」
 何(なに)を言(い)っても、妻(つま)は開(あ)けようとはしなかった。あきらめた夫(おっと)は、ふと、妻(つま)が使(つか)っていたクリームの瓶(びん)に目(め)をとめた。そこには、<これを塗(ぬ)るとあなたも若返(わかがえ)る>と書(か)いてあった。
「まさか…」夫(おっと)はさっきの妻(つま)の顔(かお)を思(おも)い出(だ)して、「これで若返(わかがえ)ったのか?」
 夫(おっと)はクリームを顔(かお)に塗(ぬ)ってみたが、なんの変化(へんか)もなかった。
「くそっ。もっと塗(ぬ)ってやれ」夫(おっと)はメタボなお腹(なか)と薄(うす)くなってきた頭(あたま)にも塗(ぬ)りたくり、すべての瓶(びん)を空(から)にしてしまった。
 朝(あさ)になって、妻(つま)はそっと寝室(しんしつ)から出(で)てきた。床(ゆか)には夫(おっと)のパジャマが脱(ぬ)ぎ捨(す)てられていて、その中(なか)で赤(あか)ちゃんがすやすやと寝息(ねいき)をたてていた。
<つぶやき>使用上(しようじょう)の注意(ちゅうい)はよく読(よ)んで、ちゃんと正(ただ)しく使(つか)いましょうね。さもないと…。
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