みけの物語カフェ

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0064「祖父の財宝」

「祖父(そふ)の財宝(ざいほう)」(2008/12/19)

 探偵(たんてい)は知人(ちじん)の紹介(しょうかい)で依頼(いらい)を受(う)け、とある豪邸(ごうてい)を訪(おとず)れた。
「探(さが)してもらいたいのは祖父(そふ)が残(のこ)した財宝(ざいほう)です」依頼人(いらいにん)は一枚(いちまい)の絵(え)を見(み)せ、「この絵(え)の下(した)に別(べつ)の絵(え)がありました。それが、どうも地図(ちず)のようなのです」
「しかし、どうしてそれが財宝(ざいほう)の地図(ちず)だと…」
「これは祖父(そふ)が描(か)いた絵(え)です。祖父(そふ)は生前(せいぜん)、命(いのち)よりも大切(たいせつ)な宝(たから)があると言(い)っていました」
 X線(せん)で撮影(さつえい)された絵(え)を見(み)ると、三角(さんかく)の記号(きごう)や線(せん)が描(えが)かれていて、地図(ちず)のようにも見(み)えた。
「この三(みっ)つ並(なら)んだ三角(さんかく)は山(やま)ですかね。それでこの線(せん)は川(かわ)か道(みち)。それでこの記号(きごう)は…」
 探偵(たんてい)は考(かんが)え込(こ)んでしまった。場所(ばしょ)が特定(とくてい)できるような文字(もじ)が書(か)かれていないのだ。本当(ほんとう)にこれが宝(たから)の地図(ちず)なのか、それすら判断(はんだん)できなかった。探偵(たんてい)は窓(まど)の外(そと)に目(め)をやった。そこには立派(りっぱ)な日本庭園(にほんていえん)が造(つく)られていた。大(おお)きな岩(いわ)が三(みっ)つ並(なら)んでいて、砂利(じゃり)が敷(し)かれ――。
「これだ!」探偵(たんてい)はそう叫(さけ)ぶと、庭(にわ)と絵(え)を見比(みくら)べた。三(みっ)つの三角(さんかく)と三(みっ)つの岩(いわ)。そして…。
「あれはなんですか?」探偵(たんてい)は庭園(ていえん)の一角(いっかく)を指(ゆび)さした。
「空井戸(からいど)です。祖父(そふ)が掘(ほ)らせたんですが、結局(けっきょく)、水(みず)は出(で)なかったと聞(き)いていますが…」
 探偵(たんてい)は井戸(いど)の上(うえ)にのせてある岩(いわ)の蓋(ふた)をどけさせた。中(なか)を覗(のぞ)くと掘(ほ)られた跡(あと)はなく、頑丈(がんじょう)な箱(はこ)が入(い)れられていた。箱(はこ)を開(あ)けてみると、子供(こども)が描(か)いた絵(え)が納(おさ)められていた。
「これは…」依頼人(いらいにん)はその絵(え)を見(み)て、「私(わたし)が、小学生(しょうがくせい)の時(とき)に描(か)いた絵(え)です!」
<つぶやき>どんなものにもかえられないもの。それが、その人(ひと)にとってのお宝(たから)なんです。
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