「失家族(しつかぞく)」(2008/12/25)
西暦(せいれき)三千八年(さんぜんはちねん)。千年近(せんねんちか)く前(まえ)の火山噴火(かざんふんか)で埋(う)もれてしまった町(まち)が発見(はっけん)された。何年(なんねん)もかけて発掘調査(はっくつちょうさ)が行(おこな)われ、数々(かずかず)の遺物(いぶつ)が掘(ほ)り出(だ)された。そして、今(いま)も発掘作業(はっくつさぎょう)は続(つづ)いている。
「教授(きょうじゅ)、これを見(み)て下(くだ)さい」研究員(けんきゅういん)が小(ちい)さな箱(はこ)を持(も)って駆(か)け込(こ)んできた。
「これは」教授(きょうじゅ)は驚(おどろ)きの声(こえ)をあげた。「よく無傷(むきず)で残(のこ)っていたな。これは奇跡(きせき)だ」
発掘(はっくつ)された箱(はこ)は頑丈(がんじょう)な金庫(きんこ)に納(おさ)められていたので、当時(とうじ)の姿(すがた)をそのままとどめていた。
「驚(おどろ)かないで下(くだ)さい。この中(なか)にとんでもないものが入(はい)っていたんです」
研究員(けんきゅういん)がそっと箱(はこ)を開(あ)けると、中(なか)から数枚(すうまい)の写真(しゃしん)が出(で)てきた。
「おお、千年前(せんねんまえ)の人(ひと)の姿(すがた)が写(うつ)っているなんて…。これは、すばらしい発見(はっけん)だよ!」
「でも、教授(きょうじゅ)。この人(ひと)たちはどういう関係(かんけい)なんでしょう。男(おとこ)と女(おんな)、それに子供(こども)が三人(さんにん)」
「うーん。これはおそらく、昔(むかし)の文献(ぶんけん)に書(か)かれていた、家族(かぞく)という単位(たんい)じゃないのかな」
「家族(かぞく)? それは、どういう基準(きじゅん)で構成(こうせい)されているんでしょうか?」
「この頃(ころ)は、男(おとこ)と女(おんな)は夫婦(ふうふ)という不安定(ふあんてい)な結(むす)びつきで暮(く)らしていたんだ。我々(われわれ)の時代(じだい)では無(な)くなってしまった習慣(しゅうかん)だよ。おそらく、この男女(だんじょ)から生(う)まれたのがこの子供(こども)たちだろう」
「なるほど、今(いま)では考(かんが)えられない暮(く)らしをしていたんですね。だって、我々(われわれ)には親(おや)と呼(よ)ぶような人(ひと)はいないし、まして子供(こども)を普通(ふつう)の人(ひと)が育(そだ)てるなんて。あり得(え)ませんよ」
「でもね、私(わたし)はいつも自問(じもん)するんだ。機械(きかい)で人口(じんこう)がコントロールされている我々(われわれ)よりも、この時代(じだい)の人間(にんげん)の方(ほう)が、エキサイティングな暮(く)らしをしていたんじゃないかとね」
<つぶやき>核家族(かくかぞく)なんて言(い)うけど、いつまでも家族(かぞく)というのは無(な)くしたくないですね。
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