「いつか、あの場所(ばしょ)で…」(2009/05/18)
「大空(おおぞら)に舞(ま)え、鯉(こい)のぼり」2
「違(ちが)うの。高太郎君(こうたろうくん)は悪(わる)くないの。…悪(わる)かったのは私(わたし)の方(ほう)なんだから」
私(わたし)はすべてを打(う)ち明(あ)けた。どうしてゆかりと友達(ともだち)になったのか。そして、高太郎君(こうたろうくん)が言(い)ったことは間違(まちが)っていないって…。これ以上(いじょう)、嘘(うそ)をつきたくなかった。本当(ほんとう)の自分(じぶん)を取(と)り戻(もど)したかった。これで友達(ともだち)をなくすかもしれないけど…、それでもいいって思(おも)った。
でも、ゆかりの反応(はんのう)はまるで違(ちが)っていた。ゆかりは私(わたし)の言(い)ったことを笑(わら)い飛(と)ばして…、
「なんだ、そんなことで悩(なや)んでたの? 気(き)にしない、気(き)にしない。私(わたし)だって似(に)たようなことしてるから。実(じつ)はね、自分(じぶん)の部屋(へや)が欲(ほ)しくて、いま根回(ねまわ)ししてるとこなんだ」
ゆかりは四人兄弟(よにんきょうだい)の三番目(さんばんめ)。彼女以外(かのじょいがい)はみんな男(おとこ)ばかり。私(わたし)は一人(ひとり)っ子(こ)だから羨(うらや)ましいんだけど、ゆかりに言(い)わせると生存競争(せいぞんきょうそう)が激(はげ)しいんだって。自分(じぶん)の欲(ほ)しいものは主張(しゅちょう)しないと手(て)に入(はい)らない。自分(じぶん)だけの部屋(へや)なんて夢(ゆめ)のよう、なんだって。
「一番上(いちばんうえ)の兄(にい)ちゃんが一人部屋(ひとりべや)で、もう一(ひと)つの部屋(へや)は三人(さんにん)で使(つか)ってて。不公平(ふこうへい)だと思(おも)わない? それでね、その兄(にい)ちゃんが大学(だいがく)へ行(い)くために家(いえ)を出(で)て行(い)く予定(よてい)だから、その部屋(へや)を狙(ねら)ってるんだ。でも、問題(もんだい)なのがちゅうにい」
「チュウニイ?」
「あっ、二番目(にばんめ)の兄貴(あにき)。こいつも狙(ねら)っててね。ちょっと強敵(きょうてき)なんだ。母(かあ)ちゃんは味方(みかた)してくれるけど、親父(おやじ)がね。男同士(おとこどうし)の絆(きずな)ってけっこう強(つよ)いでしょう。それを崩(くず)すために作戦(さくせん)を練(ね)ってるんだ。ま、見(み)ててよ。親父(おやじ)なんて娘(むすめ)には弱(よわ)いんだから。中学(ちゅうがく)に入(はい)るまでには手(て)に入(い)れるから」
私(わたし)は感心(かんしん)してしまった。彼女(かのじょ)の行動力(こうどうりょく)というか…、すごい。私(わたし)だったらとても生(い)きていけない。そんな気(き)がした。
「さくらはいいよなぁ。一人(ひとり)で使(つか)える部屋(へや)があって。ねえ、泊(と)まりに来(き)てもいい?」
「えっ? …うん、いいよ」つい言(い)ってしまった。
「やった! 私(わたし)んち男(おとこ)ばかりでしょう。話(はな)し合(あ)わなくてさぁ」
けっこう強引(ごういん)なんだ。この後(あと)、たびたび泊(と)まりに来(く)るようになった。最初(さいしょ)のうちは私(わたし)も戸惑(とまど)っていたけど、だんだんゆかりのことがほんとに好(す)きになってしまった。なんだか私(わたし)にも姉妹(しまい)が出来(でき)たみたいで…。私(わたし)の両親(りょうしん)も良(い)い友達(ともだち)が出来(でき)てよかったねって。友達(ともだち)とこんな付(つ)き合(あ)い方(かた)をしたのは初(はじ)めてだった。なんかとっても新鮮(しんせん)な感(かん)じ。
ここは都会(とかい)とは違(ちが)って隣近所(となりきんじょ)の付(つ)き合(あ)いが親密(しんみつ)みたい。縁続(えんつづ)きの人(ひと)とか、親同士(おやどうし)が学校(がっこう)で同級生(どうきゅうせい)だったとか。ゆかりと高太郎君(こうたろうくん)のところも同級生(どうきゅうせい)だったんだって。それで小(ちい)さいときから一緒(いっしょ)にいたんだ。ちょっぴり羨(うらや)ましいなぁ。
<つぶやき>田舎(いなか)っていうのは、人付(ひとづ)き合(あ)いが大切(たいせつ)なんです。助(たす)け合(あ)っていかないと…。
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