「もうひとりの自分(じぶん)2」(2009/02/14)
さおりはあの日(ひ)からずっと、もうひとりの自分(じぶん)に付(つ)きまとわれていた。見(み)られているだけでも落(お)ち着(つ)かないのに、休(やす)む間(ま)もなくしゃべりかけてくるのだ。でも、さおりはその対処法(たいしょほう)を見(み)つけた。自分(じぶん)の姿(すがた)が鏡(かがみ)やガラスに映(うつ)っているとき、彼女(かのじょ)をそこに閉(と)じ込(こ)めることができるのだ。おしゃべりも止(や)めさせることができた。
彼女(かのじょ)の姿(すがた)は他(ほか)の人(ひと)には見(み)えないようだ。だから、人前(ひとまえ)では彼女(かのじょ)を無視(むし)することにした。だって、一人(ひとり)でぶつぶつしゃべっていたら、変(へん)な人(ひと)に思(おも)われてしまうから。会社(かいしゃ)にいるときは要注意(ようちゅうい)。もちろん、机(つくえ)の上(うえ)には鏡(かがみ)を置(お)いて、邪魔(じゃま)されないようにしていた。
ある日(ひ)、もうひとりの自分(じぶん)がある提案(ていあん)をした。
「ねえ。あなた、営業(えいぎょう)の神谷(かみや)さんのこと好(す)きなんでしょ」
「何(なに)よ、急(きゅう)に」さおりは動揺(どうよう)をかくせなかった。「そんなことないわよ」
「分(わ)かってるわよ。だって、私(わたし)はあなたなんだもん」
「あなたには関係(かんけい)ないでしょ」さおりはそう言(い)うと手鏡(てかがみ)を手(て)に取(と)った。
「もう帰(かえ)ってよ。あなたのいた場所(ばしょ)に。私(わたし)の前(まえ)から消(き)えてちょうだい」
「いやよ」そう言(い)うと、もうひとりの自分(じぶん)は楽(たの)しそうに微笑(ほほえ)んだ。「わたしが、神谷(かみや)さんと付(つ)き合(あ)えるようにしてあげる。簡単(かんたん)なことよ。ちょっと足(あし)を踏(ふ)み出(だ)せばいいんだから」
<つぶやき>この話(はなし)、まだ続(つづ)くのでしょうか? さおりの運命(うんめい)は、どうなっちゃうの…。
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