みけの物語カフェ

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0079「もうひとりの自分5」

「もうひとりの自分(じぶん)5」(2009/02/21)

 次(つぎ)の日(ひ)のこと。もうひとりの自分(じぶん)の行動(こうどう)は素早(すばや)かった。出社(しゅっしゃ)するなり、後輩(こうはい)の男性社員(だんせいしゃいん)にメモをはさんだ書類(しょるい)を手渡(てわた)して、「よろしくね」と言(い)って微笑(ほほえ)んだ。もちろん、これはさおりを意(い)のままに操(あやつ)ったもうひとりの自分(じぶん)の仕業(しわざ)なのだが――。
「ねえ、どういうつもりよ」さおりはトイレに駆(か)け込(こ)み訴(うった)えた。「昨夜(ゆうべ)も言(い)ったじゃない。吉田君(よしだくん)はダメだって。幾(いく)つ歳(とし)が離(はな)れてると思(おも)ってるの? 五(いつ)つよ、五(いつ)つ!」
「それが何(なに)よ。大(たい)した問題(もんだい)じゃないわ。あの男(こ)ね、入社(にゅうしゃ)したときからあなたのこと気(き)にしてたのよ。あなたは気(き)づかなかったかもしれないけど」
「あのね。それは、わたしが隣(となり)の席(せき)にいて、いろいろ仕事(しごと)を教(おし)えてあげてたからで…」
「もう、いつまでぐちぐち言(い)ってるの。さあ、行(い)くわよ。待(ま)たせちゃ悪(わる)いでしょ」
 もうひとりの自分(じぶん)は操(あやつ)り人形(にんぎょう)のようにさおりの身体(からだ)を動(うご)かした。さおりにはどうすることもできなかった。手鏡(てかがみ)を取(と)り出(だ)そうにも、手(て)すら自由(じゆう)にできないのだ。
 会議室(かいぎしつ)の前(まえ)でさおりは吉田(よしだ)と鉢合(はちあ)わせした。吉田(よしだ)は身(み)をこわばらせた。
「あの…」彼(かれ)はしどろもどろになりながら、「今日(きょう)は良(い)い天気(てんき)ですね。ははは…」
「そうね。ふふ…」さおりもどうすればいいか分(わ)からず相槌(あいづち)を打(う)った。それを見(み)かねたもうひとりの自分(じぶん)は、吉田(よしだ)の腕(うで)をつかむと会議室(かいぎしつ)に押(お)し込(こ)んでドアを閉(し)めた。
<つぶやき>こらこら、ちょっとやり過(す)ぎじゃないですか? この話(はなし)の結末(けつまつ)はどうなる?
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