「うそつき」(2025/05/06)
よく通(とお)る小(ちい)さな公園(こうえん)で、彼女(かのじょ)はひとり、ベンチに座(すわ)っていた。僕(ぼく)は見(み)かけるたびに、何(なに)をしてるんだろうと気(き)になった。でも、話(はな)しかけるほどではなかった。
ある日(ひ)のこと、彼女(かのじょ)はベンチで眠(ねむ)っていた。今(いま)は真冬(まふゆ)で、もう夜(よる)になろうとしている。酔(よ)っているのかと思(おも)って近(ちか)づいてみたが、どうやらそうじゃないらしい。このままほっといたらまずいだろうと、僕(ぼく)は声(こえ)をかけてみた。すると、彼女(かのじょ)は顔(かお)をあげてうつろな目(め)を僕(ぼく)に向(む)けた。これが、彼女(かのじょ)との出会(であ)いだった。
それから、公園(こうえん)で見(み)かけるたびに話(はな)しをするようになった。彼女(かのじょ)はまだ未成年(みせいねん)のようで、何(なに)か問題(もんだい)を抱(かか)えているように感(かん)じた。それがなんなのかは教(おし)えてくれなかったが…。
親(した)しくなると、彼女(かのじょ)は僕(ぼく)におねだりをするようになった。一緒(いっしょ)に食事(しょくじ)をしたり、映画館(えいがかん)とか水族館(すいぞくかん)などなど、遊(あそ)びにも行(い)った。彼女(かのじょ)はときどきウソをつく。すぐに分(わ)かるようなたわいのないウソだが、僕(ぼく)はそれにもつきあった。彼女(かのじょ)が一瞬(いっしゅん)見(み)せる淋(さび)しげな顔(かお)が、どうにもほっとけない感(かん)じがして…。
ある日(ひ)。彼女(かのじょ)は家(いえ)のカギをなくしたから今夜(こんや)泊(と)めてよ、と言(い)ってきた。でも、僕(ぼく)はひとり暮(ぐ)らしだが男(おとこ)だ。彼女(かのじょ)を泊(と)めるわけにはいかない。そしたら彼女(かのじょ)は、
「もう、真面目(まじめ)かよ」と言(い)って頬(ほお)を膨(ふく)らませた。
結局(けっきょく)、近(ちか)くのファミレスで朝(あさ)を迎(むか)えることになった。そして、朝食(ちょうしょく)を食(た)べ終(お)わるとどこかへ行(い)ってしまった。彼女(かのじょ)の名前(なまえ)も知(し)らないが、この関係(かんけい)はまだ続(つづ)きそうだ。
<つぶやき>どうやら、なつかれちゃったようですね。このまま見守(みまも)ってあげてください。
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