みけの物語カフェ

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0084「魅惑の宴」

「魅惑(みわく)の宴(うたげ)」(2011/04/12)

「これ、美味(おい)しいね」ステーキをほおばりながら、由香里(ゆかり)は嬉(うれ)しそうに言(い)った。
「そうでしょ」百合恵(ゆりえ)は得意気(とくいげ)に、「この料理(りょうり)で三千円(さんぜんえん)よ。しかも、食(た)べ放題(ほうだい)のバイキング」
「もう、あたし幸(しあわ)せすぎて」由香里(ゆかり)の手(て)は止(と)まらなかった。次々(つぎつぎ)と料理(りょうり)を口(くち)へ運(はこ)んでいく。
 どこからか、かすかに声(こえ)が聞(き)こえてきた。でも、二人(ふたり)には聞(き)こえない様子(ようす)。
<もう、やめなって。昨日(きのう)、あんなに後悔(こうかい)したのに。ダイエットするんじゃなかったの>
 どうやら、これは由香里(ゆかり)の心(こころ)の声(こえ)。由香里(ゆかり)は聞(き)こえているのか、それとも無視(むし)しているのか。心(こころ)の声(こえ)はあまりにもか細(ぼそ)く、彼女(かのじょ)の食欲(しょくよく)に打(う)ち勝(か)つことはできなかった。
<いつまで食(た)べるつもりよ。もう元(もと)は充分(じゅうぶん)とったんだから、いい加減(かげん)にしなよ>
 由香里(ゆかり)は取(と)り分(わ)けてきた料理(りょうり)をすべて平(たい)らげてしまった。でも、まだ物足(ものた)りないのか、目(め)の前(まえ)の百合恵(ゆりえ)にささやいた。
「ねえ、今度(こんど)はデザートいかない? さっき、美味(おい)しそうなの見(み)つけといたの」
「いいわねぇ。あたしの分(ぶん)もお願(ねが)い」
<冗談(じょうだん)じゃないわよ。これ以上(いじょう)食(た)べたら取(と)り返(かえ)しのつかないことになるわよ>
 由香里(ゆかり)は立(た)ち上(あ)がり、デザートの方(ほう)へゆっくりと歩(ある)き出(だ)した。
<ダメよ。ダメだってば。止(と)まりなさい。そっち行(い)っちゃダメ! ブタになるわよ!>
<つぶやき>食(た)べることは楽(たの)しみのひとつ。でも、たまには心(こころ)の声(こえ)に耳(みみ)を傾(かたむ)けましょう。
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