みけの物語カフェ

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0098「べっぴん彗星」

「べっぴん彗星(すいせい)」(2011/07/14)

 夜空(よぞら)に突然(とつぜん)現(あらわ)れた彗星(すいせい)。日(ひ)を追(お)うごとにはっきり見(み)えてきて、どんどん地球(ちきゅう)に接近(せっきん)しているようだ。そして、江戸(えど)ではいろんな噂(うわさ)が飛(と)びかった。
「おい、聞(き)いたかい。星(ほし)が降(ふ)ってくるんだってよ。みんなで見物(けんぶつ)しようじゃねえか」
「熊(くま)さん、なに呑気(のんき)なこと言(い)ってるんだい。どっかへ逃(に)げないと、おだぶつだよ」
「えっ? でも、あんなにちっちぇえじゃねえか。心配(しんぱい)いらねえよ」
「まだ遠(とお)くにあるから小(ちい)さく見(み)えるんだ。そばに来(き)て見(み)ろ、こんなにでっけえんだよ」
 ご隠居(いんきょ)は、手(て)をめいっぱいに広(ひろ)げて見(み)せた。「それに、あの星(ほし)から出(で)ている尾(お)っぽには、人(ひと)を狂(くる)わす毒(どく)があるそうだ。ちょっとでも吸(す)い込(こ)んだら最後(さいご)――」
 そこへ、長屋(ながや)の寅(とら)さんが飛(と)び込(こ)んで来(き)て、
「てえへんだ! てえへんだよ、ご隠居(いんきょ)さん」
「どうしたい、そんなにあわてて」
「これが、あわてずにいられよか。神(かみ)さんが来(く)るんだってよ。ほら、あの空(そら)に浮(う)かんでるやつに乗(の)ってるんだってさ。もう、えれえ騒(さわ)ぎよ」
 それを聞(き)いて熊(くま)さん、「へえ、それはどんな神(かみ)さんだい。おいらも会(あ)ってみたいもんだ」
 ご隠居(いんきょ)さんはあきれて言(い)った。「お前(まえ)さん、何(なん)も分(わ)かってないねえ」
「だってさ、人(ひと)を狂(くる)わせるんだろ。だったら、べっぴんさんにきまってるじゃねえか」
<つぶやき>何(なに)も知(し)らないというのは、いいことかもしれません。知(し)る歓(よろこ)びがあるから。
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