「恋水(こいみず)から」(2011/07/18)
私(わたし)は木漏(こも)れ日(び)のなか、公園(こうえん)のベンチでうたた寝(ね)をしていた。ふと気(き)がつくと、近(ちか)くのベンチに若(わか)い女性(じょせい)が座(すわ)っている。いつからそこにいたのだろう。誰(だれ)かを待(ま)っているのか…、彼女(かのじょ)は動(うご)こうとはしなかった。
――それからどのくらいたっただろう。そろそろ行(い)こうかと起(お)き上(あ)がると、まだそこに彼女(かのじょ)はいた。待(ま)ち人(びと)は、まだ来(き)てないのか? 辺(あた)りを見回(みまわ)してみたが、それらしい人影(ひとかげ)はまったくなかった。私(わたし)は気(き)になって、しばらく様子(ようす)をうかがうことにした。
そろそろ日(ひ)も傾(かたむ)きかけた頃(ころ)、彼女(かのじょ)は大(おお)きなため息(いき)をついた。彼女(かのじょ)の表情(ひょうじょう)から、寂(さび)しいのを我慢(がまん)しているのが分(わ)かった。そして、彼女(かのじょ)の目(め)からすーっと涙(なみだ)がこぼれ出(で)た。
まったく、誰(だれ)なんだ。こんな可愛(かわい)い子(こ)を泣(な)かせる奴(やつ)は。私(わたし)は、放(ほ)っておけなくなって、彼女(かのじょ)に駆(か)け寄(よ)った。そしてベンチへ飛(と)び乗(の)ると、彼女(かのじょ)の身体(からだ)にすり寄(よ)った。
彼女(かのじょ)は突然(とつぜん)のことで驚(おどろ)いた様子(ようす)だったが、私(わたし)と目(め)が合(あ)うとかすかに笑(え)みを浮(う)かべた。私(わたし)は、飛(と)びっきりの甘(あま)~い声(こえ)でささやいた。ゴロニャ~ン。彼女(かのじょ)は、間違(まちが)いなく微笑(ほほえ)んで、私(わたし)の頭(あたま)を優(やさ)しくなでてくれた。この日(ひ)から、私(わたし)は彼女(かのじょ)と暮(く)らすことにした。
二人(ふたり)の生活(せいかつ)は、瞬(またた)く間(ま)に過(す)ぎていった。どうやら、彼女(かのじょ)も新(あたら)しい恋(こい)を見(み)つけたようだ。そろそろ、私(わたし)の役目(やくめ)も終(お)わりだな。私(わたし)は、ふわふわのタオルの上(うえ)でゆっくり目(め)を閉(と)じた。
<つぶやき>そっと寄(よ)りそってくれる、そんな誰(だれ)かがいてくれる。幸(しあわ)せって何(なん)でしょう。
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