みけの物語カフェ

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0078「もうひとりの自分4」

「もうひとりの自分(じぶん)4」(2009/02/18)

 さおりは落(お)ち着(つ)かない様子(ようす)で摩天楼(まてんろう)に入(はい)って行(い)った。今(いま)までこんな華(はな)やかなドレスは着(き)たことがなかったのだ。神谷(かみや)はもう先(さき)に来(き)ていて、手(て)を挙(あ)げてさおりを呼(よ)んだ。
 二人(ふたり)だけの食事(しょくじ)はとても楽(たの)しいものだった。神谷(かみや)は女性(じょせい)の扱(あつか)いがうまくて、話題(わだい)も豊富(ほうふ)で飽(あ)きさせることがなかった。きっと、何人(なんにん)もの女性(じょせい)と付(つ)き合(あ)ってきたのだろう。
 食事(しょくじ)の後(あと)、さおりはバーでほろ酔(よ)い気分(きぶん)で神谷(かみや)のおしゃべりを聞(き)いていた。その時(とき)、
「あら、裕二(ゆうじ)さん」と妖艶(ようえん)な女性(じょせい)が話(はな)しかけてきた。「今日(きょう)はどうしたの?」
「ああ、麗華(れいか)さん…」神谷(かみや)はちょっと気(き)まずい感(かん)じになった。
 麗華(れいか)はさおりをちらっと見(み)たが、「ねえ、向(む)こうで一緒(いっしょ)に飲(の)みましょ。お話(はな)ししたいこともあるし。ねえ、いいでしょう?」麗華(れいか)は甘(あま)えるように神谷(かみや)にしなだれかかった。
「ごめん」神谷(かみや)はさおりに、「得意先(とくいさき)のお嬢(じょう)さんなんだ。今日(きょう)はこれで」
 神谷(かみや)はさおりの返事(へんじ)も聞(き)かずに立(た)ち上(あ)がり、麗華(れいか)に腕(うで)を取(と)られて行(い)ってしまった。
「あらら…」もうひとりの自分(じぶん)が口(くち)をはさんだ。「残念(ざんねん)だったわね」
「何(なに)よ」さおりは周(まわ)りを気(き)にして小声(こごえ)で言(い)った。「いいわよ、どうせ…」
「もし悪女(あくじょ)になる度胸(どきょう)があるんだったら、奪(うば)い返(かえ)してあげてもいいのよ」
「わたしは、そんな…」さおりは目(め)をそらし、うつむいてしまった。
「そうね。悪女(あくじょ)ってタイプじゃないわよね。じゃ、あきらめなさい。どうせ、そんなに好(す)きじゃなかったんだし。別(べつ)の男(おとこ)にしようよ。そうだ、ちょうどいいのがいるじゃない」
<つぶやき>今度(こんど)は何(なに)をしようとしているのでしょうか。気(き)が気(き)じゃないさおりであった。
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